研究内容

研究紹介

都市部・農林業地域別システム設計

 植物資源の利活用は地域社会システムそのものに影響を与えうる活動といえます。 本講座においては、従来の林業・農業に対するシステム解析とシナリオ設計に関する研究と、植物工場の導入・普及に向けた解析を行っています。 木材や食糧/食料といった本来の生産物に関する解析農地残材、製材端材、家畜糞尿などのバイオマスの利活用に加え、環境影響、経済、地域資源循環、などについての解析を行っています。 特に、バイオマスをエネルギー源として利用する場合には、熱機関における効率にスケールメリットがあることを考慮しながら、単一のバイオマスだけに依らないシステムにより、より高効率にバイオマスを統合利用する仕組みも検討することにしています。

 これら、一次産業に関連する諸課題を解決していくためには、自治体や森林組合、地域住民などのステークホルダーによる理解と活動が必須です。 数理モデルやシミュレータなどを開発する一方で、これらステークホルダー間の合意形成に資する情報がなんなのかを特定していくことも検討していきます。

エネルギーシステムの設計

 エネルギーシステムは需要側と供給側に分けて認識することができ、それぞれの要素を担う技術が導入・更新されていくことで構築されていきます。 このとき、多種存在する技術をどのように組み合わせて導入していくかによって、システムが持つ環境性や経済性といった性能や、安定性や柔軟性といった挙動が変わっていきます。

 エネルギーシステムの設計においては地球温暖化や化石資源枯渇のような環境制約と、供給安定性や災害耐性とった社会要求を条件として考慮しなくてはなりません。 このとき、実際に技術を導入してからこれらの条件への適合性を検証するのではなく、仮設状況をコンピュータ上で実験することにより様々なパターンの技術開発・導入のシナリオを試すことによって、より良いシステムを、実際に導入する前に、検討することができるようになります。

 本講座では将来のエネルギーシステムにありうるシナリオを設計しながら、それぞコンピュータ上で実験するシミュレータ、さらにはシステムの多面性を解析するアナライザの設計・開発を行い、実際に技術・システムを導入するための支援を行うことを目指した研究活動を行っています。

予防的・先進的な健康増進・維持システム設計

 超高齢化社会を迎える我が国において、高齢者が自立して、いきいきと健康に過ごせる社会を実現することは、「プラチナ社会」の実現においても大きな目標です。 健康寿命の延長のためには、先端技術を活用した先進的な医療や健康づくり・生活改善の取り組みを通した、従来の病気に対する「治療」アプローチから先制的な「予防」あるいは「未病化」アプローチが重要となります。 特に、予防医療・健康づくりの実現においては、重要な技術の一つは、情報通信技術(ICT)です。

 本講座では、ICTと医療・健康に関する先端の学術・技術情報の分析を行っています。 そのために大規模な論文情報と特許情報を分析し、先端学術・技術知識の構造化を行う手法とツールの研究開発をしています。 また、各地域自治体の先進的な予防医療・健康づくりの事例を収集し、分析することで、再利用可能な現場の知の構造化を行います。 先端の学術・技術の知識と現場の先進的な事例を併せて俯瞰的に分析することで、ICTを活用した予防医療・健康づくりに資する新たなフレームワークの設計を行います。

社会の評価軸・指標 / メタ知識の構築

 人々の生活様式、環境、社会が多様化している現代において、従来のGDP(国内総生産)に代表される豊かさの指標に対して、豊かさを評価するための新たな指標が求められています。 本講座では、社会全体および個々人の快適性、幸福度、満足度、効率性などのさまざまな観点を考慮し、人々の生活の質や社会の豊かさを評価するための新たな定量指標、「プラチナ社会」指標、の検討を行っています。

 具体的には、既存の社会・環境・持続可能性評価指標を俯瞰的に分析することで評価指標の構造化を行っています。 また、地域自治体の住民の視点から「プラチナ社会」の在り方を検討するため、東京都荒川区を中心とし、全国の自治体で構成される「幸せリーグ」と連携し、地域住民の幸福度について複数年に渡り行われている調査の分析を行っています。 「幸福度」に関する大規模な地域住民調査の分析に基づいて、「プラチナ社会」のための指標づくりについてその設計と評価の枠組みの研究開発をしています。